さぬきこどもの国ニュースに、高松平和病院で臨床心理士をしている谷本智子氏の講演が紹介されました。ニュースに記載された内容は次の通りです。


さぬきこどもの国ニュース 2002 Vol.26春号
財団法人香川県児童・青少年健全育成事業団
「子どものしつけの時期と方法」〜小児科の発達相談室から見えてくる子どもたち・親たち〜

子どもを育てる時、どんな時期にどのように子どもを見てしつけていくといいのでしょうか。子どもの発達の時期をふまえた上で自我の育ちとしつけのポイントについて考えていきたいと思います。

発達の時期 人間は乳児期前半、乳児期後半、学童期半ばへの階層、成人期への階層と4つの階層を、階段のように登っていきながら発達していきます。中でも乳児期に信頼感を育てるのが、人間の発達にとって非常に基本的で大事なことです。また、学童期半ばはしつけについて悩む時期です。しつけや自我の育ちを考えたとき、この時期にどうかわっていくかというのがしつけのポイントになってきます。成人期は親から離れて友達や学校、地域社会の中で育っていく時期です。

自我が拡大する時期のかかわり 1歳くらいになると自我が目覚めるとよく言われますが、自我が充実する前に、自我が拡大する時期があり、自分が一番で自分が中心にまわるその時期を超えていって初めて充実していきます。しつけというのは結局は自我をどう育てるかです。

主人公は子ども・・・子どもが自分でパジャマのボタンを合わそうとする時、大人がやってしまわずにきちんとそばで見守ってあげます。できないと言ってきた時は優しく助けてあげると子どもはまた自分でやろうとするので、その時は励まします。パジャマのボタンかけという場面ひとつで親子の信頼感や子どもの意欲、指先の操作性など、たくさんのことが育ちます。何を育てていくかを見極める必要があります。

安心できる場所や人の存在・・・子どもはどんな時でも安心できる場所や人の存在が大事です。特にお母さんや家族の存在です。たとえば幼稚園でしんどくても家に帰ったらお母さんが笑顔で迎えてくれ、気持ちを分かってもらえるという安心感が、次の不安な場面や頑張らないといけない場面で頑張れる力になります。

放任でも強制でもない第3の道・・・保育所のお迎えで、「お母さんここまできて」と下駄箱の前で子どもが座り込んだとします。その時「じゃあお母さんも半分まで行くからあなたも半分までおいで」というように、お互いに自己主張してきちんと譲り合うことが大切です。絶対だめというところを強制的にやらせたり、ほうっておいたりせず、子どもが譲れるところを探してあげるというのが第3の道です。これを繰り返すことで自我が充実してきます。

子育てのポイント 子どもは親が何をして欲しいのか分かっています。親がして欲しいことを子どもがしていない時にこそ、説教ではなく積極的に子どもの話を聞くことです。宿題をせずに遊びに行ってしまった時、子どもなりの理由があるのに頭から「なんで宿題せんの!」と言うと子どもは話をしたがらなくなります。また、「宿題しないと(あなたが)困るんでしょう」というのは、"あなたのメッセージ"です。大事なのは「お母さんはあなたに宿題をしてから遊びに行って欲しかった、じゃないと寝るのが遅くなるでしょう」というように、親の気持ちをきちんと"私メッセージ"で伝えることです。子どもと言い合いになると、親は子どもを言い負かしたくなりますが、子育てで勝負をする必要はありません。親の気持ちを伝えたら、あとは子どもの判断に任せます。

親に求められるもの
自分自身を理解し、心理的に自立する・・・子育てはしんどいです。イライラした時に自分自身の人間性が問われます。親はきちんと自分自身を理解し、欠点を認め、周りの人の欠点も受け入れながら、何ができるかを考えていくことが大切です。親として、自分のイライラは自分で処理できるような自立した人間になる努力が必要です。

自分の人生を楽しもう・・・毎日の生活のなかで楽しいことを見つけ、今を充実させていくことと将来に夢や希望を持つことが、人生を前向きに生きるための条件です。このふたつは子どもの中に育てていってあげたい大事なことであり、親自身が夢や希望をもって、人生を満足して生きることが、結局は子どもに夢をもたすことにつながります。

今は効率的な考え方をする大人中心の社会ですが、子育ては無駄と失敗が大切でそれを経験しながら様々なことを学んでいきます。子ども一人ひとりを大事にして、子どもの育つ力を信じ、大人がみんなで支えていくような世の中にしていきたいものです。 
/さぬきこどもの国ニュース 2002 Vol.26春号より


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