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新たに定められる高齢者医療報酬の問題点(1)
(第55回 4月17日 )

 3 月 29 日に開催された、社会保障審議会・後期高齢者医療の在りかたに関する特別部会(第7回)で検討された「後期高齢者医療の在りかたに関する基本的考え方(案)」に関する資料が公表されました。

 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/s0329-7.html

 後期高齢者の心身の特性について、(1)治療の長期化、複数疾患への罹患(特に慢性疾患)が見られる、(2)症状の軽重は別として認知症の問題が見られる、(3)いずれ避けることのできない死を迎えることとなる事をあげ、「後期高齢者に対する医療には、次のような視点が必要である」としています。

1. 後期高齢者の生活の中での医療
高齢者の生活を支える柱の一つとして、生活の中で提供されることが必要。どのような介護サービスを受けているかを含め、本人の生活や家族の状況を踏まえた上での医療が求められる。
2. 後期高齢者の尊厳に配慮した医療
人間らしさが保たれた環境における生活を重視し、過度に医療に依存しないこととする必要がある。
3. 後期高齢者及びその家族が安心・納得できる医療
いずれ誰もが迎える死を前に、安らかで充実した生活が送れるように、安心して生命を預けられる信頼感のある医療が求められる

 一見、もっともらしい表現になっていますが、要するに「在宅で療養し、医療は最低限にして、在宅で死亡」する事を望んでいるようにも読めます。

 1950 年代には 80 %以上あった自宅での死亡が徐々に減少し、 1976 年には病院での死亡と同等になり、現在では約 20 %(老人ホームなど医療以外の施設を含む)になっています。

 この問題を取り上げた 2005 年 7 月 29 日の第 17 回社会保障審議会医療保険部会では、死亡前1ヵ月の入院医療費は年間約 9000 億円であり、在宅医療の充実により自宅での死亡を4割に引き上げるなら、 2015 年度には約 200 億円の「医療費適正化効果」が見込まれるとしています。また、同年 8 月 10 日の第 18 回同部会では、終末期患者の治療費について、入院食道がん術後で癌性疼痛や発熱などがある場合、入院治療費 115 万円に対して在宅治療費は 57.7 万円で済むと、在宅重視の方針の背景に経済的動機があることは明らかです。

  http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0729-9c.html

 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/08/s0810-3g.html

 終末期を自宅等で送ることを希望する人が約6割である事を踏まえ、自宅での死亡を引き上げるために、在宅医療体制を充実させることに異論はありませんが、数値的目標を持ち強制的に進めることには大きな違和感を覚えます。

(この項、続く)


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