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4月からの介護保険の改定は弱者切り捨ての「改定」です (第244回 5月26日 )

 第219回(2月6日)、第224回(2月24日)と、介護保険の認定調査員が使用するテキスト2006年版と2009年版の比較による問題点を指摘しました。

 関節可動域(関節が動く範囲)について、2006年版では手指の動きの評価の項目がなかったために、関節リウマチなどで指が変形しシャツのボタンが止めにくいといった細かな動作の評価が不十分な場合「その他」の項目に記載することになっていましたが、2009年版では手指や肘などは「(評価項目に)該当しない」ことになり、ご丁寧に「日常生活上での支障に関しては評価しない」ことになっていることを問題点として指摘しました。

 介護保険の認定審査の中で、更に大きな問題点が存在することが明らかになりました。

 2006年版では「麻痺等の有無」の項目は、「日常生活に支障のある場合に、その身体部位を確認する項目である」として、「加齢による筋力の低下や運動機能の低下が含まれる」とされ、「動きがあっても日常生活に支障がある場合をいう」としていました。要するに手や足が動いても、日常生活に支障があれば「麻痺」があるのと同じと考える、ということでした。

 2009年版では「麻痺等の有無」の項目は、「筋肉の随意的な運動機能が低下または消失した状況をいう」とされました。要するに、動かせることができるかできないかが問題であり、日常生活の影響については「関係ない」ということです。

 右上肢の場合、椅子に座り、右肘を伸ばした状態で、前方に肩の高さまで上げる、横に肩の高さまで上げ、両方できれば「麻痺はない」と判定します。

 物を持たずに右腕を上に上げることはできるが、右手で杖を持って歩くのは手が震えるのでできない、右手で箸をもって食事をするには介助が必要だ、排尿や排便後に下着を持ち上げるのにはとても時間がかかるといった場合、これまでは「日常生活上での支障を」評価して、「麻痺がある」と判定していましたが、2009年版では「麻痺はない」と判定されます。

 麻痺がないと判定されると、介護度は大きく変化します。特に要支援や要介護1といった、介護度の軽い人たちでは、場合によっては「非該当」(自立)と判定されることがあります。認定調査に関わる人の意見では「(新システムに移行してから)自立と判定されるケースが増えているのではないか」という声もあります。

 今回の「改定」が、介護が軽い人に対して、介護度をより軽く認定する目的での改定である、といってよいと感じています。引き続き、現場からの声を発信していきたいと思います。


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