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香川医療生活協同組合

生活保護バッシングを考える

(第581回 6月14日 )

 本欄第579回(6月7日付)で、「生活保護法の改正案と生活困窮者自立支援法案」について触れました。また、第553回(1月25日)では、生活保護制度について、大阪市で何が起きているかを報告しました。

 今回は、生活保護バッシングがここまで来たのか、という問題を取り上げます。

 大阪府の東大阪市が、生活保護費を抑制する目的で「かかりつけ薬局を義務化」(産経新聞6月12日)しました。記事によれば「生活保護受給者の医療費は……過剰な診療や薬の投与が起きやすいとの指摘があ」る。「複数の医療機関や診療科を受診することによる向精神薬の重複処方なども懸念されている」。「かかりつけ薬局を1カ所に限定することでそれぞれの薬の処方を把握し、チェックできると判断。安価な後発医薬品の利用促進にもつながるとみている」そうです。

 もともと日本では、医師と薬剤師の区別はありませんでした。山本周五郎の「赤ひげ」は映画の上映や前進座の演劇で上演されてきましたが、劇中に医師が薬を調剤するシーンがでてきます。明治になり、1889年に薬律(薬品営業並薬品取扱規則)が制定され、薬の調剤をするのが「薬剤師」、薬を売るのが「薬局」ということになりました(創立120周年記念の日本薬剤師会年表より引用)。

 現在では、医師の発行する処方箋に基づき、薬剤師が薬を調合する制度が定着してきました。多くの医療機関が院外処方箋を発行し、患者は自由にまちの薬局(調剤薬局)を選び、薬を受け取ることになっています。

 患者が自分で主治医をきめるように、自分で「かかりつけ薬局」を決めるシステムになっています。そのことにより、薬の重複調剤(胃薬、睡眠薬、シップなどが多い)を薬剤師がチェックして医師に情報を提供したり、薬の相互作用(いわゆる「飲み合わせ」)をチェックすることができ、医師も安心して調剤ができるという利点があります。

 しかし、内科ではめったに使わない薬、例えば精神科で使用する薬剤、神経科(パーキンソン病など)の薬剤は、どこの調剤薬局でもおいている薬ではないので、現実的には複数の調剤薬局を使用することになります。

 また、自宅から遠いところにある専門医に診てもらい、その近くの薬局を利用している患者が、風邪をひいて近くの医師に診てもらった場合、当然近くの薬局を利用することになります。こういう時のために「お薬手帳」があります。普段服用している特殊な薬と、風邪薬との相互作用を薬剤師がチェックできる仕組みがあります。生活保護患者だけ、利用する薬局を1カ所に限定する必要はないのです。

 東大阪市の対応には疑問が残ります。


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