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香川医療生活協同組合

「社会保障制度改革国民会議報告書」の問題点2 介護保険はどうなるか

(第617回 12月6日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2013年10月20日号(1614号)に掲載した、第17回 「社会保障制度改革国民会議報告書を読み解く(その2)」、を転載します。一部修正しています。 

 社会保障制度改革国民会議が、8月6日に発表した「社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」(以下、「報告書」と略)の内容について、触れていきたいと思います。

 「報告書」の第2部は、「社会保障4分野の改革」と題して、少子化、医療、介護、年金分野の改革について述べています。

 今回は、介護保険制度改革です。

 「『範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図る』こと‥…が求められている。……ついては、……予防給付の見直しのほか、利用者負担等の見直しが必要である。……公平性の視点から、一定以上の所得のある利用者負担は、引き上げるべきである」と述べています。

 まず、「予防給付の見直し」が挙げられています、「予防給付」とは、介護認定を受けた方で、要支援1・要支援2とされた方に対する介護サービスです。といっても、訪問介護(ホームヘルプサービス)や、通所介護(デイサービス)、通所リハビリ(デイケア)のサービスを受ける時にサービス内容が異なる訳ではありません。支給限度基準額が異なるため、回数が大幅に制限を受けるという点に差があります。

 2015年からの改定では、このサービスを介護保険から外してしまい、自治体が「地域の実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的にサービスを提供」する、つまり自治体の責任に置き換え、ボランティアの活用を行う事業に変えてしまおう、ということなのです(※)

 財政が豊かでない自治体では、そこまで手が回らないのでサービスは低下します。ボランティアがいなければ放ったらかしになるでしょう。結局、要支援者は介護保険の対象ではなくなるかもしれない、ということなのです。

 要支援者の多くは、いわゆる虚弱老人が多く、一見自立しているように見えても、軽い認知症があったり、もの忘れがひどく日常生活に困難を抱えている場合が多いのです。「配食や掃除、買い物といったサービス利用が多く、自立支援につながらない」という意見もありますが、実際は食事や掃除などの日常生活に直結するサービスがあってはじめて、一人暮らしが可能であったり、老老介護が可能になるのです。

 「利用者負担等の見直し」では「一定以上の所得のある利用者負担」を引き上げるというものです。現在検討している案では、年金収入で年間280万円以上(または290万円以上)の場合、2割負担になります。その影響は、65歳以上の高齢者の約2割にのぼるとみられます。これでは、何のために保険料を払っているのか、ということになります。

 介護保険の利用料が高額になった場合に払い戻しされる「高額介護サービス費支給制度」(住民税世帯課税の場合、世帯合計で月3万7200円)がありますが、在宅サービスの1人あたり平均利用料は、高額介護サービス費の半分以下のため、大多数の高齢者は軒並み2倍に跳ね上がります。

 世論の批判があまりに大きかったために、11月27日に厚労省が示した介護保険制度の改定案では、要支援者向けサービスを全廃し市町村に丸投げする方針は、撤回に追い込まれました。しかし、訪問介護と通所介護については市町村への丸投げ方針を変えていません。


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