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香川医療生活協同組合

「社会保障制度改革国民会議報告書」の問題点8 少子化対策ははどうなるか(2)

(第652回 6月6日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2014年4月20日号(1632号)に掲載した、第23回 「社会保障制度改革国民会議報告書を読み解く(その8)」、を転載します。一部修正しています。

 第639回では、子ども・子育て支援策として、保育制度が、自治体が責任を持ち施設に補助するというやり方から、利用者に補助し(給付金方式)、保護者の自己責任による直接契約方式に変更される問題点について述べました。

 さて、都市部を中心に保育所が不足しています。この問題を解決するために、厚労省は昨年6月に「待機児童解消加速化プラン」を打ちだしました。2013年・14年度を「緊急集中取組期間」とし20万人分、2015~17年度を「取組加速期間」とし、計40万人分の保育施設を整備するというものです。

 しかし、実態はどうかというと、日本共産党東京都議団の調査では、都内の認可保育園不足のため、この4月から入園を希望しても入れない児童数が約2.6万人に上ることが報告されています(3月4日付「赤旗」)。

 昨年9月に厚労省は13年4月1日時点での保育所関連状況の取りまとめを公表しました(注1)。それによると、12年4月に比し13年4月では、保育所定員は4.9万人増、保育所を利用する児童の数は4.3万に増えました。今年の4月までの1年間でどれほど増えたかはまだわかりませんが、先述の東京都の現状を見ても、「プラン」通りに推移しているとは思えません。

 保育所整備をそれなりに行うとしても、厚労省が待機児童の現実的な受け皿として考えているのは、0~2歳児を受け入れる「地域型保育事業」です(注2)。認可定員6~19人の小規模保育と、1~5人の家庭的保育があります。このうち小規模保育はA、B、Cの3型に分けられます。保育にあたる人は、A型は全員保育士ですが、B型では保育士が2分の1以上、C型では「家庭的保育者(+家庭的保育補助者)」でよいとされています。

 家庭的保育とは、2010年4月から児童福祉法上に位置づけられた保育事業で、保育を行う人を「家庭的保育者」(いわゆる、保育ママ)と呼びます。保育士資格を保有していない場合は、認定のための講義・実習などの研修を受け、市区町村長が認める必要があります。

 C型の場合、研修や実践の質の問題は別に評価するとして、研修を受け市区町村長が認めるという資格上の担保があります。しかし、B型の場合は、保育士が2分の1いれば、他の人員は無資格者で構わないという制度です。これで、問題は起きないのでしょうか。不安の残るところです。家庭的保育補助者については、「マンパワーが求められる場面が想定される」ので必要とされますが、人手が足りなければ誰でもいいです、と読めないでしょうか?

 さらに問題なのが予算措置です。もともと厚労省は40万人分の保育施設の整備に4,273億円、質の改善(職員の配置基準や給与改善)に6,865億円と合計で1.1兆円あまりかかるとしていました。しかし、政府は消費税増税分から7,000億円しかあてていません。この7,000億円も、消費税が10%になってからの数値です。

 政府は、3月下旬に新聞の折込広告の形で政府広報を配布し、「増収分5兆円はすべて子育て・医療・介護・年金といった社会保障のために使われます」といいました。しかしこれはウソなのです。

 消費税増税ではない、きちんとした予算措置が必要です。

 注1:保育所関連状況とりまとめについては、下記のHPを参照ください。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000022684.html

 注2:地域型保育事業については、下記のHPを参照ください。
 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_10/index.html
 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_10/pdf/s1.pdf

 これまで、税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるかと題して連載してきましたが、今回でいったん終了とします。いま、国会に「医療・介護総合推進法案」が上程され、医療・介護を同時に改悪されようとしています。次号からは、そういった内容を中心に、タイトルを変更し連載を続けていきたいと思います。


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