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新たに定められる高齢者医療報酬の問題点(2)
(第56回 4月20日 )

 第 55 回の続きです。「後期高齢者医療の在りかたに関する基本的考え方(案)」には、後期高齢者にふさわしい医療の体系として、以下の点があげられています。

 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0329-7a.pdf

 (1)治療後の生活を見越した評価とマネジメント、(2)在宅(居住系施設を含む)を重視した医療、特に複数疾患を総合的に診る医師や医療機関の機能特性に応じた地域における医療連携、(3)介護保険のサービスと連携の取れた一体的なサービス提供、(4)安らかな終末期を迎えるための医療、患者の自己決定の重視や十分な疼痛緩和ケアが受けられる体制

 しかし、これらの点は現在の日本の医療に求められている内容そのもので、あり、決して「後期高齢者に特有の心身の特性」に矮小化されるべきではありません。また、「(後期高齢者医療)制度の中で、いずれ避ける事ができない死」も、これまでの老人保健法でも、死は「いずれ避ける事が」できませんでした。

 こう考えると、後期高齢者医療制度について、新たな医療制度が必要であるという合理的な理由は存在しないと思います。「新制度の保険者である後期高齢者の負担を考慮し、制度の持続可能性に留意した、効果的・効率的な医療提供の視点」とは、結局高齢者に負担を強いる安上がりの医療を求めている、と言えるのではないでしょうか?

 COML(ささえあい医療人権センター)の辻本さんは、「過剰・頻回受診を是正する必要がある」という文言に対し、「制限する以前に、医療の限界や不確実性を高齢者自身が学ぶ機会が必要で、医療によって改善を期待できることはどのようなことなのかを冷静に取捨選択できるようにしなければならない」と指摘しています。

 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0329-7e.pdf

 高齢者の医療機関受診回数が多くなる原因は、複数の疾患をもっているため多数の医療機関(複数の科)を受診する必要があるからです。例えば男性高齢者に多い病気でいえば、高血圧、前立腺肥大、白内障、変形性腰椎症、などですが、これだけで4つの科を受診することになります。水虫があれば皮膚科、義歯の作成には歯科、と受診回数は増えるのが当然と言えます。

 高齢者の特性を問題にするのなら、辻本さんの指摘のように「高齢者自身が学ぶ機会」を作り(学習権)、高齢者自身が治療法などの選択をする「自己決定権」を尊重するような仕組み作りが重要なのではないでしょうか?

 これは医療生協の患者の権利章典の実践そのものです。地域に医療生協の患者の権利章典を広めるチャンスでもあります。


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