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高齢者にやさしい診療所づくり(その2) (第247回 6月5日 )

 「WHO高齢者にやさしい診療所ツールキット」の話の続きです。

 本書では、高齢者に特有の4つの大きな問題点を、「老年医学の巨人」(Geriatric giants)と呼んでいます。物忘れ、うつ、尿失禁、転倒です。これを外来診療の待ち時間の間に短時間で評価する必要があります。

 10分間総合スクリーニングで、問題点を洗い出します。担当するのは、最初は看護師が適当だと思いますが、本来、職種に関わらずこういった観点を持つ必要がありますから、最終的には医療スタッフなら誰でもできることをめざします。

 まず、まず、性格の異なる3つの名前を言ってもらいます。例えば、「本、トラック、鉛筆」です。これは、後で再度質問することを告げておきます。

 次に、尿失禁の質問です。過去1年間で尿をもらして下着をぬらしてことがあるかどうか、過去1週間以内にあったかどうかを聞きます。2つとも「はい」なら、後で、尿失禁について細かく聞いていきます。

 3番目は、うつです。悲しい気持ちになり気分が沈んだりすることが時々ありますか、と聞きます。「はい」なら、後で、うつについての細かい質問を行います。

 4番目が身体機能に関する質問です。バスをつかまえるために走る・早く歩く、力のいる家事(床や壁の掃除)、歩いていける範囲より遠方の外出、入浴などについての質問です。ここでは、住んでいる地域や環境により質問を工夫する必要がありそうです。

 次の質問が、「最初に言った3つの物の名前を答えて下さい」です。これが記銘力(記憶して、かつその記憶を保持する能力)のテストです。

 あとは、栄養(体重の変化)、聴覚(患者の後ろに立って数字を言って、聞こえるかどうか試す)、視覚(必要があれば視力検査)などをチェックして終わりです。

 慣れたら10分間でできるそうです。

 さて、訓練は必要ですが、それほど難しいものではありません。むしろ、テストするといった雰囲気ではなく、相手に対する敬意を持って行うなどの注意が必要です。こういったテストを行うことを診療所の壁に掲示するなども必要かも知れません。


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