日本生協連・医療部会発行の、「虹のネットワーク」 2009 年5月号のコラム「社会派 しんさつ室 No.33」に掲載された文章を転載します。一部修正しています。
(第253回 6月26日 )
3年おきに見直される介護保険制度、4月1日から制度の一部見直しや、介護サービスの定価にあたる介護報酬が変更されました。医療保険の場合もそうですが、制度変更の内容が直前に公表され、細部にわたり明確になるのは2週間前くらいですから、事業所の準備も大変です。
もっと大変なのは、行政から利用者への周知徹底が十分に行われておらず、すべて事業所の責任で説明しなければいけないことです。「介護保険料がなぜ上がったのか」「状態は変わらないのに、なぜ介護度が下がったのか」といった苦情の対応に追われているのではないでしょうか。
介護報酬の増加は必要なことですが、利用者にとっては負担増になります。一方で、介護度に応じた利用限度額は変わっていませんから、サービスの利用を控えるか、自費でサービス利用を続けるかの選択が迫られる人もでてきます。
介護度の認定システムも変更されました。3月号(第232回・3月31日付)でも触れた、認定調査員の調査項目から認知症の「精神・行動障害」(注)の重要な項目が外されました。そのため、介護度の認定が軽くなるだけでなく、認知症の自立度も低く判定され、事業所に支払われる報酬も少なくなる仕組みになっています。
また、重要な部分をコンピュータが判定するために、実態を反映した介護度を検討する認定審査会の役割が低められています。そのため、今後判定される利用者の介護度が、実態より低くなる可能性が高まっています。また、必要な介護が受けられなくなる方もふえてくるでしょう。
地域で困っている人はいないか、制度の改善を求める運動を地域ぐるみでできないか、ここでも医療生協の役割が求められていると思います。
注:これまで、認知症の「問題行動」と呼ばれていましたが、呼称が変更されました。
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