日本生協連医療部会の第4次5ヵ年計画の表題は、「―健康をつくる。平和をつくる。― 地域の思いを協同の力で「かたち」に変える」、です。日常の取り組みの中にも「思いをかたちに変え」たい、という私たち職員の「思い」が見える、そんな経験をしました。
神経難病で在宅療養している「寝たきり」状態のAさんの希望は、「海を見たい」「コスモスを見たい」でした。声帯麻痺のため気管切開を余儀なくされ、最近では呼吸筋の疲労も見られます。終末期ではありませんが、少し早目に家族とカンファレンス(話し合い)を持つことにしました。急変時の対応、入院するとしたらどこの病院にお願いするのか、本人の思いは、家族の希望は、などなど。
患者の夫は「家で最期を看取る」と、患者である妻に約束をしていました。そして、「私が元気なうちは家で看取りたいので、私の心臓病もよろしく」と、家族まるごとの健康管理を依頼されました。
本人の思いを実現しようとするなら、気候の良い今を逃せば、次は半年後の来年の春になります。本当にこれが最後のチャンスなのかどうかはわかりませんが、秋の外出日和がチャンスであることは間違いありません。
訪問看護ステーション「ほがらか」の看護師を中心に、プロジェクトが開始されました。血圧計、体温計、呼吸状態が急変した時の医療用具の準備、痰(タン)が増加した時の吸引器具、酸素ボンベの手配、急変時の対応のための血管確保など、医療上の常識的な準備だけでなく、洋服に着替える、化粧道具の準備、尿バッグを目立たないように隠す袋など、生活感あふれる「Aさん外出援助計画表」が準備されました。
自動車の中でもタンの吸引ができるように、シガーソケットからの電源を利用して吸引ができるための器具など、かつて診療所が在宅医療を行っていたご家族からお借りしました。「借用すみ、吸引力あり、確認すみ」と計画表にあります。
6日(火)は生憎の雨。しかし、出発する頃にはどうにか天気が持ち直し、無事出発することができました。師長さんは、急変時などの対応のため診療所で待機し電話係、会議中の私はマナーモードにした携帯電話を前に置いての「参加」です。
15時半頃、1通のメールがありました。「無事に帰宅しました。雨もやんでよかったです」というメッセージと共に、コスモスを前にしたAさんの写真が送られて来ました。
「思いをかたちにかえる」取り組みは、日常の活動の中にある、それを見つけていきたいと思います。
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