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「子ども手当」を考える
(第285回 11月10日 )

 8日のNHK「日曜討論」で、政府税制調査会担当の峰崎財務副大臣が「来年度から「子ども手当」を創設する代わりに所得税の扶養控除を廃止すると、障害があるなどの理由で成人の家族を扶養している家庭では増税になることから、新たな支援策を検討したい」という考えを示しました。

 「子ども手当」とは民主党が先の衆議院選挙の政権公約(マニフェスト)で掲げたもので、優先的に実施するとしています。子ども1人あたり月額2万6千円を中学卒業まで所得制限なしに支給、2010年度からは半額、2011年度からは全額支給するというものです。

 この政策に必要な財源は、年間5兆円を超えます。民主党は配偶者控除、配偶者特別控除、一般扶養控除を段階的に廃止、現行の児童手当(3歳未満の子どもに月1万などを支給。所得制限あり)を廃止するなどを考えていますが、それで生まれる財源は2.2兆円程度で約3兆円不足します。

 また、配偶者控除などの廃止の影響を「夫婦のみの世帯で一方が家事専業の場合で」「全世帯の4%程度」としていますが、事実とは異なるようです。

 この問題について、高山憲之・一橋大学教授と白石浩介・三菱総合研究所主席研究員が詳細な研究成果を発表しています。それによると、全国約5,000 万世帯のうち、所得が増加する世帯は38%(約1,930 万世帯)、所得増減なし世帯43%(約2,190 万世帯)。

 負担増世帯は18%(約920 万世帯)で、民主党の主張の約5倍です。負担増となるのは、17 歳以下の子どもがいない世帯に集中、所得増世帯の増加額平均が年23 万円に対し、負担増世帯は年4 万円の負担増です。

 世帯年収別にみると、低所得世帯では大半が所得増減なし、年収300 万円以上で所得増世帯が約半数、年収800 万円以上の高所得世帯で所得増が約500 万世帯(世帯総数の9.8%、所得増額は27 万円弱)です。

 他方、負担純増となる世帯は17 歳以下の子どもが1人もいない世帯のうち、3控除廃止の影響を直接うける世帯で、年収500 万円以上の世帯の約4 分の1 を占めるとしています。

 要するに、民主党の言う、影響をうけるのが全世帯の4%というのは事実とは異なり、実際は1000万世帯近くが負担増になります。また、高所得世帯のうち500万世帯が所得増になる提案でもあり、低所得層への対策ともいえません。

 子育て支援の充実が必要なことはいうまでもありませんが、実態に基づく政策提案を求めるものです。

 ※下記の高山憲之教授のHPを参照下さい。

http://www.ier.hit-u.ac.jp/~takayama/

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