前回、後期高齢者医療制度を廃止した後の制度について、触れました。今回は、制度変更についての財政問題を考えてみます。
まず、後期高齢者医療制度の廃止と老人保健制度の復活に必要な財源は、国保への支援等に伴うものも含め約8500億円(1)です。
また、70才〜74才の医療費負担は、法では2割となっていますが、福田内閣の時に後期高齢者医療制度が余りに評判が悪いために一定の手直しがされ、2010年3月まで1割負担とされていました(「現役並み所得者は3割」)。今年の1月の終わりに出された通知で、今月(2010年4月)から2011年3月末までこの制度が継続となりましたが、その後どうなるかは不透明です。これに必要な財源は4100億円です(2)。
さらに、75才以上の高齢者の窓口負担を軽減するのに、前回述べたように、1割負担で上限を1000円とする、あるいは、1回500円で月2回まで負担(3回目からは、その月は無料)にする。これに5000億円(3)必要です。
70才以上の現役並み所得者の3割負担の廃止に、1400億円(4)必要です。
このほか、国民保険や政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)の財政問題も深刻です。その原因は元々国の支援で設立した制度であるにも関わらず、法で定められた金額を意図的に減らしており、こちらへの手当ても同時に行わないといけません。
国保医療費の国庫負担を38・5%から本来の45%に戻すのに5700億円(5)かかります。政管健保(現・協会けんぽ)の医療給付費の国庫負担を13・3%から法で定められた16・4%に戻すのに1250億円(6)必要です。
以上(1)〜(6)までにかかる費用は、約2兆6千億円です。
さて、一体このようなお金が本当にでてくるのか、ということです。
民主党の事業仕分けに出て来ない内容として、大企業の税金をまける制度、不公平税制があります。不公平な税制をただす会の調査によれば(「福祉とぜいきん」08年3月)、国税で約15兆円、地方税で約6兆円、合計で21兆円とされています。
この、8分の1程度の額で、後期高齢者医療制度廃止から、一定の社会保障制度の手直しが可能になります。
このほか、軍事費の大幅削減、政党交付金の廃止や、ODA(政府開発援助)の削減など、本来行うべき「事業仕分け」の対象はまだまだあります。
まさに、ムダを削って社会保障の充実を、だと思います。
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