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香川医療生活協同組合

いま、医療現場はどうなっているか(2)

(第388回 12月14日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第10回)です。2010年9月19日号(1504号)に掲載した「いま、医療現場はどうなっているか(2)」を編集しました。

 8月1日に開催された、香川県母親大会の分科会での報告の続きです。

 まず、一番目は「人」の問題です。

 医師・看護師不足は深刻です。例えば、2008年データでは、日本の医師数は人口10万あたり210人ですが、OECD平均は300人で約13万人不足しています。問題は、これが結果として人為的に作り出されたものだということです。

 1970年には、OECD平均が110人で日本は100人とそれほど大きな差はありませんでした。それが、2000年には、280人と190人と大きな開きとなりました。この間、医療の高度化が大きく進みました。一般的に、製造業では技術革新は省力化につながりますが、医療ではかえって人手が必要になります。ですから、医療が進歩すれば人は沢山必要になるのです。

 1980年代に始まる「臨調行革路線」による、医師養成数の削減方針の閣議決定(1982年)、厚生省・吉村保険局長の「医療費亡国論・医師過剰論」(1983年)が流布され、医学部定数が削減(1986年)されました。当時、医師会や歯科医師会は賛成、マスコミも社説で「賛成する。医師が増えれば国民医療費が増大し、健康保険制度がパンク」(朝日新聞)、「医師が多くなり、収入や社会的地位が下がれば、優秀な人材が集まらない」(毎日新聞)と後押しをしました。

 その結果、例えば、産科医師は1994年から2004年の10年間で7%減など、各分野での医師不足が、顕著となりました。

 100床あたりの病院の医師・看護師数も、米国と比較するといずれも5分の1です(1996年)。医療内容も変化しています。検査・治療時の承諾書、介護保険関連の書類記載など、医師の事務量は膨大になっており、潜在的な医師不足の背景になっています。

 2005年3月に厚労省が開催した「 第2回医師の需給に関する検討会」では、「医師需給をめぐる国内外の状況はこの6年間に変わってしまった。国際的にはこれまで『医療の効率性、特に医療費の削減を目指す観点から医師数を規制する』政策が主流であったものが、『安全や質の確保から必要な医師を増やすべき』という政策基調に大転換していることが判明した」と報告されています。

 2004年から開始された医師臨床研修制度により、「研修医が病院を選ぶ」ようになりました。最初の2年間は「研修」に専念することになり、大学にも指導医が必要となりました。その結果、大学から地域の病院への若手・中堅ともに医師派遣が困難となりました。また、病院勤務の過重負担を嫌い、開業ラッシュが起きていることも要因となっています。

 中讃地域のある公的病院でも、脳外科は外来のみ、耳鼻科、産科、精神科は休診、内科も呼吸器科医がいないなど地域医療に大きな影響がでています。香川県は面積が狭く、アクセスがよいため目立ちませんが、お産ができる医療施設も、少なくなっています。

 高松市内の病院でも、土曜の夜などは救急搬入要請の電話が2ケタかかってくる事も珍しくありません。


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