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香川医療生活協同組合

いま、医療現場はどうなっているか(4)

(第418回 4月12日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第14回)です。2011年1月16日号(1515号)に掲載した「いま、医療はどうなっているか(4)」を編集しました。飛来峰第402回(2月15日付)の続きです。

 3番目の問題は、「形」(医療制度)です。

 外国の方に日本の医療制度を説明する時には、始めに「日本にはすべての国民が加入する複数の医療保険制度があります」と述べます。

 最近では「保険料が高く払うのが大変など、さまざまな問題が起きています」と言い訳がましく追加しています。

 経済大国ニッポンで「保険料が高すぎて払えないために保険証を取り上げられる人もたくさんいます」という現実を紹介する訳にはいきません。

 現在の医療制度の最大の問題は、国民皆保険制度が空洞化していることです。

 厚労省のまとめによれば、国民皆保険制度の最後の砦である国民保険制度で、2009年度の保険料(税)の滞納世帯数は、445万世帯で21%です。短期被保険者証交付世帯は121万世帯、制裁措置で保険証を取り上げられた資格証明書交付世帯は31万に上ります。

 全日本民主医療機関連合会(民医連)の全国調査では、国保証取り上げによる死亡者が2008年一年間で31人いました。これは、民医連加盟の事業所に受診した患者のデータで、孤独死などは含みませんから、実態はもっと深刻だと思います。

 国民皆保険制度が始まったころの1965年は国保世帯主の職業内訳は、農林水産業が42%、自営業者が25%、被用者が20%、無職は6%でした。つまり、殆どすべての人が何らかの収入がある、ということを前提にした制度だったのです。

 ところが高齢化が進む中で、無職が1992年に40%を超え、2006年には55%と過半数になりました。無職というのは、少額の年金か無収入ということです。

 保険料だけでは成り立たない制度に変わってきたということなのです。

 標準世帯(40代の夫婦、子ども2人、資産なし)の場合、高松市は所得100万円で年間14万円(所得の14%)、所得200万円なら31万円(所得の15%)で、社会保険でいえば所得500万円世帯並みの負担ということになります。県下で最も負担の重い琴平町では、所得100万円に対し国保税は29万です(いずれも香川県社保協資料より)。

 払いたくても払えない、という声が上がるのは当然のことだと思います。

 もともと国保会計の国庫負担は50%前後でした(1961年は43%、1975年は59%)。1984年の国保法改悪で、国庫負担率が医療費の45%から、給付費の50%に変更されました。医療費とは3割の自己負担+7割の給付費ですから、医療費の35%に減少したことになります(高額医療費への補助制度があり、実質38.5%)。

 その後、国保事業の事務費や保険料減額措置に対する国庫負担を廃止し、2007年度には25%まで減少しました。これが国保会計を悪化させた最大の要因です。

 後期高齢者医療制度を廃止した後の新しい制度を民主党政権が検討していますが、75才以上を別勘定にする点で基本的な構造はこれまでと同じです。

 さらに、70才から74才の医療費負担を2倍にする、市町村単位で国保会計に一般財源から繰り入れていた制度を廃止するために、都道府県単位に変更するなど、自民党・公明党政権以上に国民負担を増やす、新たな改悪を狙っています。

 数年前に米国に行き、患者の権利を守る仕組みの研究を行ったことがあります。レクチャーを受け、質疑応答を行ったあと、「米国のやり方を真似るのではなく、国民すべてが保険で医療を受けることのできる世界に誇るべき制度を守ってほしい」と言われたことを思いだしました。


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