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香川医療生活協同組合

東日本大震災と医療(その2)

(第436回 7月12日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第19回)です。2011年6月19日号(1530号)に掲載した「東日本大震災と医療(2)」を編集しました。

 東日本大震災から3カ月が経ちます。

 5月30日の記者会見で仙石官房副長官は、菅政権の震災復興の取り組みへの批判に対し「震災復興が遅れているなんて全然思わない」と反論し、「段取りのいい首長がいる市町村は仮設住宅建設も早く、そうでないところをとらえて批判するのは『木を見て森を見ず』だ」と、強調し、菅政権の無策ぶりを棚に上げ、地方自治体と国民に責任を押し付ける発言を行いました。

 とんでもない、というのが率直な感想です。

 さて、厚生労働省は、6月8日に被災の大きかった岩手・宮城・福島3県にある380病院のうち、約8割の300病院が全壊または一部損壊したと、医療機関の被害状況のまとめを公表しました。

 5月25日集計で、病院は全壊が岩手4、宮城5、福島2の計11。一部損壊が岩手58、宮城123、福島108の計289でした。

 5月17日時点で外来診療を一部制限している病院は3県で19、外来診療が全くできないのは17、入院患者の一部制限が21、全く受け入れられないのは31です。

 4月19日時点でまとめた医科・歯科の診療所の状況は、3県計6531カ所のうち、全壊が岩手36、宮城126、福島5の計167カ所。一部損壊は岩手89、宮城641、福島277の計1007カ所でした。

 岩手県の数字が少ないのは、被災を受けた地域に医療機関が元々少なかったからだと思われます。

 社会保険診療報酬支払基金の5月定例記者会見資料によれば、カルテ等が紛失したりして3月診療分で「概算請求」を行った医療機関は407、保険証を紛失した患者に対し一部自己負担金を請求せず、全額保険者に請求したレセプト(診療報酬明細書)は3月診療分で約4万件、4月診療分で13.4万件にのぼりました。

 さらに4月診療分のレセプト枚数を前年度と比較すると、宮城県は10.2%減、福島県は8.5%減でした。岩手県は先述した理由で、2%減でした。

 阪神・淡路大震災の時も同様の概算請求等の処置がとられましたが、1995年2月〜4月の3か月間で該当レセプトは12.5万件でしたから、今回の震災が医療機関に甚大な影響を及ぼしたことがわかります。

 医療従事者に関する影響の調査もあります。

 日本看護協会が3県の被災エリアにある協会員がいる医療機関を対象に、郵送で5月1日時点の状態を聞いたところ、403施設の58%から回答があり、少なくとも16人の看護師が死亡、252人が退職、203人が休職していました。

 宮城県保険医協会の調査では、約1600人の会員に4月に郵送でアンケートを実施。472人から回答があり、被災地で働く医師らを中心に、42人が自身の健康状態を「よくない」と答え、疲労や余震のストレスのほか、「今後の不安感や失望感」「スタッフや患者の不安を受け止めるのが精神的につらい」との声もあったとしています。

 被災した医療機関では、建物だけでなく医療器械も流出・破損しており、まさに一からの出直しを余儀なくされています。再出発には多額の資金が必要で、地域医療を再建するための、これまでにない大規模の公的な支援策が必要とされています。


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