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香川医療生活協同組合

大震災の被災医療機関へ、国が直接支援の手をさしだすべきです

(第444回 8月19日 )

 香川県保険医協会報 2011年5月20日号(No.325)の「主張」欄に掲載した文章を転載します。一部修正しています。

 東日本大震災発生から3カ月が経過しようとしていますが、被災者への本格的な支援は始まったばかりで、早急な対応が望まれます。

 医療機関の被害も甚大です。毎日新聞の調査(4/16)によると、沿岸部では、宮城県で、36病院中4病院が休診、約320ある診療所の2割強が休診。岩手県では、15病院中2病院が休診、120診療所中約40診療所が休診。福島県では、16病院中診療休止は8病院となっています。

 また、地域医療を担う開業医が被災したため、高度な救急医療を担う病院に患者が殺到する事態になっていると伝えられます。

 東北地方は元々医師数が少ない地域でしたが、2007年の「公立病院改革ガイドライン」により公立病院が縮小され、状況を悪化させています(岩手県では4年間で400床以上減)。

 今回の震災で多くの医療人が医療支援に駆けつけ、当初は重要な役割を果たしましたが、避難が長期化するにつれ地域に根差した医療を行っている開業医の役割が重要になりました。

 復興の取り組みが進んでいきますが、安全・安心のまちづくりに医療機関の整備は急務です。公的な病院に医師を確保する課題もありますが、地域の第一線医療を担う開業医への支援も必要です。

 沿岸部の医療機関は、建物そのものが津波で流されたところもたくさんあります。診療スペースは確保できても、医療器械や器具が全くなく、まさに一から始めなければなりません。開業医の平均年齢は60才弱といわれていますが、農村部では開業医も高齢化が進んでおり、建物を再建し医療器械の新規購入を行うには億単位の資金が必要で、自力で行うのは困難です。

 阪神・淡路大震災時の公的な支援策は民間病院の救急部門に限定されており、今回の参考にはなりません。また、医療施設近代化施設整備事業は限定的な仕組みです。

 地域医療を再建するために医療機関を支援する公的な制度を作らなければ、地域医療の崩壊はさらに進行します。従来の枠組みを超えた支援策を強く望むものです。

 上記の文書を書いてから4カ月近くたちますが、政治の動きは見えません。大震災対策を目的にした、第1次予算でも、第2次予算でも、地域医療を担う、中小規模の民間医療機関への支援は事実上見送られました。

 田村智子参院議員(共産)は7月25日の参院予算委員会でこの問題を取り上げました。細川厚労相は、東日本大震災の被災9県で病院は全壊10カ所、一部損壊581カ所、医科・歯科合わせた診療所は全壊169カ所、一部損壊3398カ所にのぼり、災害復旧補助金の申請は349機関であり、公的医療機関などについては、復旧費の補助率を引き上げているなどと答弁しました。

 田村議員は「へき地医療や救急医療に参加していなければ、補助を申請することさえできない」と批判、宮城県の調査で補助が必要とした医療機関が回答の4割を超えたにもかかわらずその半数(105機関)が補助対象外となったことを指摘。「岩手県は対象外の医療機関に独自で支援策を組んだ。国が本来やるべき支援策を被災県に負わせたのと一緒」と問いただしました。

 いまこそ、国が支援の手を差し伸べる時だと思います。


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