観光、ビジネスなど人の動きは世界的になっています。空と海から日本に入国する人は、法務省の2010年の出入国管理統計表によると2620万人です。出国者数もほぼ同数で、そのうち日本人は1600万人あまりですが、1人で何度も出入りすることがあるため想像以上に多いのだと思います。
2010年6月の統計をみても入国が177万人(うち日本人は125万)です。東日本大震災の影響で、3月から外国人の入国が減っていますが、新型インフルエンザの流行した2009年の6月と同程度まで回復しています。
移動する人が元々病気を持っていることもありますが、日本にはない疾病にかかり、帰国してから発病することもあります(病気にかかったことは知らずに帰国しますから、患者に責任はありません)。
主にウイルスや寄生虫などが原因で、我が国に存在しないか、存在したとしても極めて珍しい感染症を輸入感染症(旅行者感染症)と呼びます。当然ながら、これらの疾患に詳しい医師はきわめて少ないのが現状です。しかし、前述のように海外との交流がここまで盛んになれば、医療従事者としても知らなかったではすまなくなっています。
国立感染症研究所の感染症情報センターのホームページに掲載された輸入感染症の一部を紹介します。
コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、デング熱、マラリア、ラッサ熱。
すべて知っているという方は少ないと思いますが、海外で流行している感染症については外務省の海外安全ページに掲載されています。2011年7月15日に出された「夏休みに海外へ渡航される皆様へ」では、東南アジアで、マラリア、デング熱、デング出血熱、チクングニヤ熱が流行、注意が呼び掛けられています。
こういった様々な感染症に対しては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で、対応が決められています。
最も危険な第1類感染症は省略するとして、SARS、結核、鳥インフルエンザ(H5N1)などが含まれる2種感染症は、県内では、高松市民病院、さぬき市民病院、内海病院、三豊総合病院などが病床を準備しています(ほかに結核病床をもつ病院もあります)。
しかし、アジアではやっているマラリア、デング熱などは、A型肝炎などと同じ4類感染症に分類されており、扱いがそれほど変わる訳ではありません。
最近、輸入感染症が疑われる患者が発生し、県立中央病院をはじめ地域の拠点病院からいずれも「対応できない」という理由で入院を拒否される事態がありました。幸い、受け入れ病院が見つかりましたが、受け入れ病院を探すのに1時間以上かかりました。
4類感染症であり、蚊を媒介する疾患ですから、直接感染の危険はなく、これでよいのかと疑問を持つケースでした。医療従事者のモラルの問題も含め、真剣に考えていく必要があると思います。
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