(第479回 1月27日 )
日本医療福祉生活協同組合連合会(医療福祉生協連)が発行する医療福祉生協情報誌comcomの 2012 年2月号のコラム「社会派 しんさつ室 No.23」に掲載された文章を転載します。一部修正しています。
2011年12月14日に米国下院議会の歳入委員会貿易小委員会が公聴会を開き、「市場の閉鎖性で日本は悪名が高い」と日本の貿易姿勢を批判、「日本はすべてのものを交渉のテーブルに乗せなければいけない」という意見が続出したと報じられました。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加するとどういったことが想定されるかについては、2国間の協定である米韓FTA(自由貿易協定)が参考になります。外務省がまとめた「米韓FTAの概要」によれば、医薬品・医療機器等に関して「委員会を設置」し「価格決定等を申請者の要請に応じて検討する独立の機関を設置」することになっています。また、新薬の特許保護期間について「調整する」となっています。
医薬品等の価格や、薬剤の特許期間について、自国で決めることができなくなるということです。
こういった米国の主張が、韓国に対してだけのものということはありえません。TPPに日本が参加すれば、医療保険制度の根幹である医薬品の価格やさまざまなルールについて、日本国内の法律や規制と関係なく米国企業の要望を検討していくことになります。
さらに問題になっているのが、いったん自由化を認めたら元のように規制をかけることができなくなる「ラチェット規定」です。後戻りはできないのです。
また、投資先の国の政策で「不利益を被った」と企業が判断すれば国や自治体を訴えることのできる「ISD条項(投資家対国家の紛争解決のための規定)」の問題もあります。
香川県内でも、米国に本社のある保険会社が、交通事故に際して被害者に支払った保険金の約半額を、「最初に診た病院にも責任がある」として2億円近くを請求する裁判を起こし話題になりました。この裁判は日本の法律に基づき検討されますが、ISD条項を認めると、こういった紛争は国際投資紛争解決センターが取扱い、審理は非公開、不服があっても上訴できないなど、圧倒的に多国籍企業に有利な制度です。
日本は、TPPに参加するべきではありません。
|
|