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香川医療生活協同組合

TPPで医薬品の安全性は守られるのでしょうか

(第561回 3月8日 )

 3月6日の参院本会議で安倍首相は、公的医療保険制度について「これまで得られた情報では、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉で議論の対象となっていない」と明言しました。現在のTPP参加国で国民皆保険制度をもつ国はありませんから、「議論の対象」になる訳がありません。当たり前のことをことさら重要なことであるかのようにいって国民をだます安倍流のテクニックにすぎません。

 それではTPP交渉で何が問題になるのでしょうか。それを考える上で重要なヒントになるのが、2011年2~10月に断続的に開かれた「日米経済調和対話」です。ここで示された「米国側関心事項」の「医薬品・医療機器」の項目を見ていきます。

 新薬創出加算では、「加算を恒久化し、加算率の上限を廃止」とあります。「新薬創出加算」とは、特許期間中の薬剤の価格を引き下げない仕組みのことで、海外の薬剤を日本に導入したら高い価格を維持し、海外の製薬メーカーの利益を確保する制度です。これをずーっと続けようというのが米国の要求です。

 外国平均価格調整(FPA)ルールでは、「日本における価格が外国平均価格より高いか低いかにかかわらず、製品が平等に扱われるよう FPA ルールを改定」することを求めています。海外で作られた薬剤の価格が、日本では海外より極端に安いということは現実的にはありえませんから、この要求は、海外では安いが日本だけ高くても別に問題はないだろう、という要求にほかなりません。

 日本では、新薬は発売から1年間は14日しか処方できないというルールがありますが、この「処方日数制限」を撤廃することを求めています。この制度は、発売後短期間で副作用が出現し発売中止になったり使用制限が課せられた例が多く、社会的問題になったことを踏まえて作ったルールですが、これがじゃまで仕方ないということです。

 行政審査期間では、年 4 度の薬価収載を月一度へ増やすことを求めています。日本の制度にまで米国が口出しする典型的な例だと言えます。

 薬剤の値段、薬価を国で定めるのは日本の医療保険制度の根幹です。TPPに参加すれば、ここに外国のルールが持ち込まれます。例えば、オーストラリアには、薬価を低く抑える医薬品給付制度(PBS)がありますが、オーストラリアと米国の自由貿易協定(FTA)の交渉ではこの制度がやり玉にあがりました。日本がTPPに参加すれば、間違いなく薬価制度が崩れていきます。

 医薬品の安全性についても、他国のデータがそのまま持ち込まれ、安全性の審査も形骸化する可能性もあります。

 B787機のトラブルの背景に、ボーイング社のデータをそのまま米国が承認し、米国が承認しているからという理由で日本にも速やかに導入されたという経緯があったことは記憶に新しいところです。

 ※下記のHPを参照してください。

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/1/0127_01.html

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/1/pdfs/0127_01_1.pdf

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp04_04.pdf
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