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香川医療生活協同組合

TPPと医療(1)――TPP反対の根拠をより具体的に示す必要があります

(第566回 4月5日 )

 日本ジャーナリスト会議香川支部の会合で、「TPPと医療」というテーマで講演を行いました。

 講演後の意見交換で、後期高齢者医療制度が導入された2008年の「医療制度改革」の時に比べて、反対運動やTPP参加を問題視する世論の盛り上がりが少ないのはなぜか、ということが話題になりました。

 2008年の時は、75才になると従来の保険制度から切り離されるいわば「差別制度」であったこと、新たに保険料負担が増える人が多数であったこと、前期高齢者も医療費負担が2倍になる(その後一時停止になっていますが)など、具体的に誰がどの程度負担増になるかが明確であったことから、怒りがわき上がったのではないかという意見がありました。

 TPPの医療に対する影響は、誰がどの程度迷惑するのかが不明確であること、医療制度そのものが難しく医療関係者が問題を感じても、説明に時間がかかるため問題点がわかりにくく、反対の世論が盛り上がらないのではないかと思います。

 米国の要求は、薬価を決める審議会(中医協=中央社会保険医療協議会)に米国の製薬業界代表をいれろとか、新薬の処方期間の制限を延長しろとか、海外での(米国でという意味ですが)薬の値段が高い場合日本でも高いのは当然だといっている、という話を聞いても、自分の生活にどうかかわるか具体性がないため、ピンとこないと思います。

 TPPに参加して米国の要求通りになれば、薬の値段が倍加して、1錠64円の高血圧の薬が144円に2.3倍になり年間負担が8700円増えるとか、胃潰瘍の薬が1カプセル178円から395円になり年間負担が2万円以上増えるといった具合に、具体的に丁寧に説明する必要があるのではないかと思います。

 薬については、安全性という問題もあります。米国は薬の安全性の審査を速やかに行い、年4回の審査会も毎月開けと要求しています。東京大学の津谷教授によれば、1999年から2004年までに安全性の理由で世界市場から撤退した34種類の医薬品のうち、23種類が日本では販売されていませんでした。

 日本人(有色人種)と白人との人種差による効果の違いや副作用の出方の違いという問題もあります。これまでの薬害の経験から考えても、必要な薬剤を速やかに臨床応用していくという課題と、より安全な薬剤を使用してほしいという国民要求とのバランスを考えていくことが重要だと思います。

 米国の製薬業界の利益のために審査を簡単に期間を短くというのは、本末転倒だと思います。


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