アスベスト被害に関わる、最近のニュースを拾ってみました。
最初に、基本的な知識の確認です。アスベストは大きく分けて2種類あります。一つが蛇紋石族のクリソタイル(温石綿。白石綿とも呼ばれる)です。最も多く使用され、世界の使用量の9割以上といわれています。もう一つが角閃石族で細かく分けると5種類ありますが、実際に使用されたのは、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)です。青石綿は発がん性が高く最も危険と言われています。
さて、東日本大震災以来、全国で耐震補修工事が行われています。近畿地方のある高校で、昨11月に軒庇のボード取り換え作業を行った時に、渡り廊下付近でアスベスト小片が落ちていることがマスコミで報道されました。さらに、この5月には、毒性の強い青石綿を含んだ小片が見つかりました。
工事を始める前に、建築資材としてアスベストを使用している記録がなく気が付かなかったようですが、そもそもどんな工事でも使用している資材の名前が記録されているわけはないので、解体工事や改修工事を行う時には、資材にアスベストが含まれていることを前提にして進めるべきだと思います。
次に、近畿地方の元看護師が中皮腫で死亡したのは、医療用ゴム手袋を再利用するため使用していたタルクに混入していたアスベストを吸ったことが原因だとして、労災認定されました。
タルク(Talc)は、滑石という鉱石を粉砕したもので、成分は含水珪酸マグネシウムです。医療現場で、ゴム手袋は今では使い捨てですが、昔は高価であったなどの理由から再使用しており、その際ゴム手袋がくっつかないようにタルクを使用していました。以前は、タルクにアスベストが混入していても特に問題とはならず、こういった事例が起きたと考えられます。
タルクへの石綿含有についての規制は2006年からですから、職種によっては、こういった問題が残っているかもしれません。
最後に、関東・東海地方での裁判です。1件目は、重機メーカー大手のIHIの元社員が肺がんで死亡したケースです。1966年~83年にかけ工業炉の据え付けなどを担当していた方で、IHIの安全対策の責任が問われました。2件目は、中部電力浜岡原発で検査業務に従事していた方が中皮腫で死亡した事例ですが、中部電力に賠償責任はなく子会社2社が賠償するという内容で和解しました。和解なので何とも言えませんが、親会社に責任がないのかという、疑問が若干残ります。