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香川医療生活協同組合

「社会保障制度改革国民会議報告書」の問題点5  医療保険はどうなるか(2)

(第630回 2月14日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2014年1月19日号(1623号)に掲載した、第20回 「社会保障制度改革国民会議報告書を読み解く(その5)」、を転載します。一部修正しています。

 「「社会保障制度改革国民会議報告書」の第2部、「医療分野の改革」の続きです(引用時に、一部省略・改変。以下同じ)。

 「日本の医療費の対GDP比は、OECD諸国の中では中位にあり、世界一の高齢化水準を鑑みれば、決して高い水準にあるとは言えない」「日本の医療機関は相当の経営努力を重ねてきており、国民皆保険制度、フリーアクセスなどと相まって、日本の医療は世界に高く評価されるコストパフォーマンスを達成してきたと言える」

 かつての、医療費が高すぎるという認識から、世界的には医療費は中位であり、コストパフォーマンスに優れているという評価になっており、この認識は常識的になったといえます。

 ただ、その背景として、医師・看護師など医療従事者が少ない中で、献身的に過重労働を顧みず医療を支えてきたという歴史的な背景があります。

 年齢階級別にみた医療施設に従事する医師数統計によれば、1割が70才以上です。名誉職だけという人もいるでしょうが、大半は診療に従事しています。コストパフォーマンスの良さの背景には、こういった日本独特の事情もあります。

 「年金財政と比較をすれば、年金給付費の対GDP比は2012年度で11.2%、2025年度で9.9%とその比率が低下する」「医療給付費は2012年度から2025年度までの間に7.3%(自己負担を含む総医療費では8.5%)から8.8%(同10.1%)へと1.5%ポイントの増加が試算されており、同時期、介護給付費は1.8%(自己負担を含む総介護費では1.9%)から3.2%(同3.5%)へと1.5%ポイントの増加が見込まれ」ると述べています。しかし、前回も書きましたが、医療や介護は常に1対1のサービスですから、人員が多数必要で、新たな雇用を生み出すという特徴があります。

 医療や介護に関連する支出が増える一方で、雇用が増えるため、所得税も増えるし、生活関連物資の購入により他の産業の売り上げも増え、好循環を生み出すという面も見逃すことはできません。

 「負担面では、保険料・税の徴収と給付段階の両側面において、これまで以上に能力に応じた負担の在り方、負担の公平性が強く求められることになる」

 確かに、所得が一定以上になっても社会保険料は変わりません(標準報酬月額の上限は121万円)。所得水準が低い層を中心に、もっときめ細かに税負担を減らすべきだし、いわゆる「富裕層」に対する税負担のありかたはもっと検討すべきだと思います。ただ、いま、検討されている高齢者の「高所得」の基準が妥当なものとは思えません。

 「急性期治療を経過した患者を受け入れる入院機能や住み慣れた地域や自宅で生活し続けたいというニーズに応える在宅医療や在宅介護は十分には提供されていない」という指摘はその通りです。

 しかし、医師・看護師不足を背景に地方都市では、急性期を過ぎた患者が入院できるベッドはどんどん減っているのが現状です。

 「病院完結型」の医療から「地域完結型」の医療への転換を謳っていますが、日本の地方都市の現状はとても地域では完結できません。


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