8月26日付(第671回)本欄で、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(案)」(「医療・介護総合法案」と略します)について、「政府は5月中(14日と言われています)に採決を強行しようとして」いると書きましたが、予測通り、5月14日の衆議院厚生労働委員会で採決を強行、5月15日の衆議院本会議において、全野党が反対するなか自民・公明両党によって採決が強行されました。まず、そのことに強く抗議をしたいと思います。
いま開かれている第186回国会は、2014年1月24日から6月22日までの150日間です。通常土曜・日曜は審議がないため、実質6月20日(金)までです。小池晃参院議員(共産)が法案の不備を追及(注1)し、審議が遅れています。委員会の開催は週2回程度であまり時間がないことから、審議途中で再び採決を強行する可能性もあります。医療・介護をはじめとして、国民生活に大きな影響を与える重要な法案ばかりですから、拙速な審議は許されるものではありません。
さて、今回の医療・介護総合法案とはいったいどんな法律なのでしょうか。マスコミ等が伝える情報で問題点は多少は理解できるでしょうが、全体像は明らかではありません。それは、医療、介護にとどまらず、病院など医療機関の役割を定める医療法、看護師業務を定める保健師助産師看護師法など、19の法律を一度に変更する内容になっているからです。
そのため、医療機関等で医療事故が疑われる状況で死亡した患者への対応や、看護師が医師の業務の一部を行う特定看護師制度など、殆ど議論がされることなく衆議院で強行採決が行われました。参議院でも強行採決が行われたなら、国民が殆ど知る機会がないまま法律が成立することになります。これでは、民主主義国家とは言えません。国会での十分な審議が必要です。
法案の中身を概括すると、以下のようになります。
1.医療面では
・都道府県が病院の役割について計画を作り、病院の機能分化を進める
・知事による強制措置も導入される
・医師以外にはできなかった医療行為を看護師ができるようにする
・「医療事故」について、第三者機関による事故調査制度創設する
・規制緩和を行い、外国人医師が診療ができるようにする
2.介護面では
・要支援1、2の対象者へのサービスを介護保険から外して自治体事業へ
・特別養護老人ホームへの新規入所者を、原則要介護3以上に限定する
・利用料を1割から2割へ引き上げる(年金所得280万円以上)
・施設入所者での居住・食費の補助を縮小する。
などです。これ以外にもありますが、次号から少しずつ取り上げていきます。
注1:小池議員が追及した、医療介護総合法案の不備については、下記のHPを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-04/2014060401_02_1.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-06/2014060601_01_1.html
注2:法律の略称がマスコミや諸団体により異なりましたが、「医療・介護総合法」という呼び名に落ち着いたようです。法案が成立するまでは「(案)」をつけるべきだと思いますが。