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香川医療生活協同組合

安心して住める都市(まち)づくりを考える

(第391回 12月24日 )

 香川県保険医協会報 2010年11月20日号(No.320)の「診察室の窓から」欄に掲載した文章を転載します。一部修正しています。

 引きこもりの子供と2人暮らしをする、高齢者のAさんが脳梗塞で入院しました。リハビリテーション後の退院先は、自宅が住める状態にないため、どこかに転居しなければいけませんが、保証人がなかなか見つかりません。

 冷暖房器具がないため住環境が悪かった、Bさん一家が引っ越しすることになりました。Bさんの兄弟が保証人に名乗りをあげましたが、信用保証会社の審査で、65才以上の人、年金生活者などではダメだといわれました。

 いつリストラされるかわからない人より、年金受給者の方が、額はともかく収入は「安定」しているのではないかと思うのですが、そう簡単ではありません。

 こういった問題は、単に「個人責任」で解決できる問題ではありません。いずれのケースも関係者の努力で転居でき、新しい住環境で療養できるようになり、とりあえずの問題は解決しました。

 一見元気そうに見える通院患者さんも、さまざまな社会的な背景を持っています。経済的な問題に焦点が当てられがちですが、住居の問題が深刻な場合もあります。

 憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の中には、居住環境も含まれます。

 通院可能な程度の病状の間、問題は顕在化しませんが、いったんADLが低下し介護や介助が必要になると、たちまち問題が明らかになってきます。

 一人暮らしの場合はもちろん、二人世帯であっても老老介護、認認介護など、都会でも地方でも、似たような状態が増えてきました。これまで社会が持っていた「地域の力」が衰えているように思います。

 WHO(世界保健機関)は2007年10月、高齢者がまちの中でいきいきと暮らせるための「高齢者にやさしい都市(まち)づくり」計画を提唱しました。そこでは、バリアフリーの道路や利用しやすい交通手段など、保健医療や地域の交流など全般的な分野を含んでいます。

 高齢者にやさしいまちは、妊婦や子供たちも安心し暮らせるまちづくりにつながります。医療・福祉にとどまらず、「地域」に目を向ける必要性を感じています。

 ※2010年は今回が最終号です。ご愛読いただきありがとうございました。2011年は、1月7日より再開です。それでは、よいお年を。


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