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香川医療生活協同組合

アスベスト労災認定について考える(連載400回です!)

(第400回 2月4日 )

 2006年9月に開始した連載も4年を超え、400回となりました(パチパチ)。この間力を入れてきた分野に、アスベスト労災問題があります。

 地元新聞に相談会開催のビラを折り込む、建交労(全日本建設交運一般労働組合)高松本部と協力し地域で相談会を開催する、希望者に善通寺診療所を受診していただき症状のある方は胸部レントゲン写真を撮る、所見のある方は精密検査や治療を勧めるなど、こつこつと取り組んで来ました。

 その成果があり、これまで労災の適応であることを知らなかった方が、善通寺診療所を受診し認定されてきました。この1月に善通寺診療所の労災保険で治療する患者が20人になりました。振動病やトンネル工事に関連するじん肺患者も含まれていますが、大半がアスベスト関連疾患です。

 アスベストにより引き起こされる疾病で、労災認定の適応となるのは、(1)石綿肺、(2)原発性肺癌、(3)中皮腫(胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜)、(4)良性石綿胸水、(5)びまん性胸膜肥厚の5つです。

 石綿肺はじん肺法に基づいて診断が行われます。肺がんや中皮腫はこれまでも多く発見されています。少ないのが、良性石綿胸水とびまん性胸膜肥厚です。この二つの疾病は2003年の通達で追加されたものですが、診断について「本省に協議すること」としたため、結局は専門家でなければ診断できないし、びまん性胸膜肥厚については、一般の医療機関で診断するのは事実上不可能でした。

 2006年2月の通達では少し前進して、胸膜が「もっとも厚いところが5mm以上あり、片側なら(範囲が)2分の1以上」などの基準が明示されましたが、「著しい肺機能障害を伴うもの」とされ、ハードルが随分高いものとなりました。香川県ではまだ一例もないと、ある講演で聞いたことがあります。

 今回認定された中に、香川県初(?)のびまん性胸膜肥厚がありました。

 症状が強く、レントゲンでじん肺の所見に乏しいが、胸水が存在するため「良性石綿胸水」として申請するつもりでした。しかし、胸膜肥厚が明らかなので、そちらで申請してみてはどうかという専門家の助言があり「びまん性胸膜肥厚」で申請したところ、昨年3月に却下されました。

 異議申請を行いたいという本人の強い希望があったため、文献等を参考にして5月に意見書を提出しました。その後、7月に認定基準の変更があり、呼吸機能検査の基準が実態を反映したものに近づいたため、労働基準局から新基準の項目に合わせた診断書の再提出が求められました。8月に再度提出したところ、今回認定となったものです。

 基準の変更という追い風があったとはいえ、1年以上かけての認定となりました。実は「労災認定」というのはこれくらい地道に取り組まないといけない仕事です。「継続は力なり」だと思います。

連載500回を目指して、引き続き取り組みを強めたいと思います。


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