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香川医療生活協同組合

東日本大震災と医療(その1)

(第435回 7月5日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第18回)です。2011年5月17日号(1527号)に掲載した「東日本大震災と医療(1)」を編集しました。

 東日本大震災から2カ月、被災地域の復興は緒についたばかりです。福島県など東京電力福島原発の放射能汚染被害にさらされた地域では、被災が現在進行中で「復興」はこれからの課題だと思います。

 さて、医療機関も大打撃を受けましたが、詳細な実態は明らかにはなっていません。

 被災1ヵ月時点での調査によれば(「毎日」4/16付)、岩手県や宮城県の沿岸部では2割から3割の診療所が休診となっており、避難所の医療だけでなく、地域の医療供給体制が大きく崩れていることがわかります。

 病院でも事態は深刻です。沿岸部では病院の1割が休診、3割程度が診療縮小を行っています。

 東北地方は元々医師不足が顕著でした。病院の医師や看護師の数については、医療法で人員配置の基準(人員配置標準)が決められており、これを満たさない場合「標欠」とされます。

 2005年度の調査では、医師数の基準を満たした病院は全国平均が83.8%、北海道・東北は63.5%と最も低い水準でした。看護師も不足しています。

 自民党・公明党政権は2007年6月に「経済財政改革の基本方針2007について」を閣議決定し、社会保障費削減を目的とした「公立病院改革ガイドライン」の実行を自治体に強要します。

 「公立病院改革の3つの視点」として、以下の3点が示されました。

1.経営効率化
主要な経営指標について数値目標を掲げ、経営の効率化を図る

2.再編・ネットワーク化
中核的医療を行い医師派遣の拠点機能を有する基幹病院と、基幹病院から医師派遣等様々な支援を受けつつ日常的な医療確保を行う病院・診療所へと再編成し、ネットワーク化を進める。

3.経営形態の見直し
民間的経営手法を導入し、地方独立行政法人化や指定管理者制度を導入する。民間への事業譲渡や診療所化など事業の在り方を見直す。

 これらの方針の下に全国で自治体立病院のリストラが始まりました。

 多くの公立病院では、医師不足・看護師不足のため入院患者数を制限していました。当然収入が減りますから、経営は悪化します。赤字が続き病床の利用率が低いと、ガイドラインにより、ベッド数を減らす、診療所に再編する、そして民間委譲ということになります。

 岩手県では2007年に県立釜石病院(272床)と釜石市立釜石市民病院(250床)が統合され、250床が削減されました。2009年には県立病院の5付属診療所の病床が廃止され、合わせて95床の減となりました。2010年には奥州市水沢総合病院が33床、県立大槌病院が61床削減されました。

 釜石市では、震災前は年間1300人近い救急搬送があり、市民病院が半分以上を受け入れていましたが、市民病院廃止後は、県立病院が全部引き受けることになりました。今回の震災で、県立病院に患者が殺到し医師や看護師など職員の疲労が限界に達していると報じられています。

 病院機能が維持できたところでも、地域のかかりつけ医がないため、慢性疾患医療が困難となっています。

 自公政権により始められ、民主党政権が進めてきた、公立病院改革ガイドラインのめざす「効率化」の弊害が明らかとなりました。


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