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香川医療生活協同組合

医療崩壊につながるTPP参加には反対です

(第465回 11月29日 )

 11月初旬に、「損保会社が医療機関を訴える」というニュースが報道されました。

 交通事故でけがをした女性の両親が、運転していた知人に損害賠償を求めて提訴、判決に基づきAIU保険会社(本社は米国のニューヨーク)が約3億5千万支払ったが、「最初に診た病院にも責任がある」として、約1億7千万をその病院に請求する訴訟を起こしたというものです。

 報道によれば、病院もAIU保険会社も「コメントできない」とのことですから、事実経過はよくわかりません。

 ここで問題にしたいのは、賠償額が無制限の保険に加入している患者を診察しても、保険会社から金を要求されることがある、ということです。

 医療保険であれ、自動車損害賠償保険であれ、保険の種類に関係なく、診断の遅れや医療処置が不適切な場合、患者や家族から「医療ミス」「診断ミス」として訴えられることはあると思います。

 しかし、「金額は無制限に支払います」と、個人と損保会社が契約している内容について、その契約内容について直接の関係のない医療機関に一緒に責任を取れというのは、どう考えてもおかしいと思います。

 この論理が通るなら、「いつでも、どこでも、誰でも」患者を診ることが難しくなります。交通事故患者はお断り、という医療機関がでてもおかしくないことになります。「医療事故」や「医療ミス」が起きたときに、患者や家族側と話し合って賠償することはあるでしょう。しかし、医療機関の同意なく(いわば)勝手に支払った賠償金の一部を医療機関に請求することが認められるならば、保険会社から請求される心配のない患者だけみておけばよいことになり、医療におけるモラルは崩壊します。

 この問題は、日本のTPP参加と関係がある問題なのです。

 国際法上の仕組みとして、「投資家対国家の紛争解決 (Investor State Dispute Settlement、ISDS) 条項」というのがあります。多国籍企業が、他国の政府や自治体を自由に訴えることができるようにする制度で、ISDとも略されます。

 米国の業界団体は、TPPに加盟する条件にこの条項を盛り込ませようとしています。投資先の国の政策で「不利益を被った」と企業が判断すれば、提訴できる仕組みなのです。実際に訴訟になれば、多くの協定で仲裁機関に指定されているのが、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)です。この審理は非公開で、不服があっても上訴することができません。しかも、地方自治体の規制も、訴訟の対象になります。

 こんな仕組みが導入されたら、現在の医療体制は崩壊してしまうと思います。多国籍企業が、ある意味で自由に国や自治体を訴えることのできる仕組みを日本に持ち込むべきではないと思います。


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