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「『家に帰りたい』という思いに寄り添って外出支援」 訪問看護ステーションみき

入院中のAさんについて病院地域連携室から相談の電話がありました。
病状悪化で緊急入院し治療していましたが、そのままBSC(Best supportive care)の方針となったこと、家が自営業で忙しいためAさんは在宅生活を困難と考え、病院での看取りを希望されていることが伝えられました。
しかし、家に帰れていないため最期までに1回家に帰りたいと話があり、利用薬剤等の関係で外泊は難しい為、自費外出支援での訪問看護の利用は可能かという相談でした。

Aさんとご家族の外出への不安は強かったのですが、訪問看護が来てくれるなら安心ということで話が進み、地域連携室と連絡を取り合い、自費外出支援が可能となりました。
病院での輸液管理等や、緊急対応可能時間を考慮し、日中2時間半での外出となりました。

介護タクシーを利用し病院を出発したと地域連携室より連絡があり訪問しました。
家に到着し、ベッドへの移乗では5種類のルートがあったため注意しながら行いました。

一段落すると、「ジュースがのみたい」などの訴えがありました。
少量ずつですがおいしそうにジュースを飲み、「うまいな~」「やっぱり家がええな」「落ち着くな~」としみじみ話されていました。

爪切りをして欲しいと依頼があり実施すると、何度も爪を見ながら「ありがとう」と大変喜ばれていました。
帰宅中は口数が多く、笑顔も多く楽しそうに話されており驚きました。
入院前のご自宅への訪問では、無口で会話が続かず、静かな状態での訪問だったのです。
久々の帰宅で、心の緊張がほぐれAさんらしく過ごせたのではないかと思い間ました。

1回目の外出で自信がつき、2回の外出が実現でき、ご家族も喜ばれていました。

ご逝去されて1ヶ月ほど経ち、グリーフケアを兼ねて訪問をさせていただきました。
ご家族から「兄は帰れる自信がなかったみたいで、訪看(訪問看護師)さんがいなかったら、帰ると言えなかったと思います。心強かったんだと思います。」と、話がありました。
迷いのある中、訪問看護の存在が、Aさんの背中を押すことができたのではないかと考えます。

入院中であっても心落ちつく場所に訪問看護の支援があれば外出可能となるよう、今後も支援を提供できたらと思います。