患者様は奥様と介護タクシーで受診されましたが、病状が悪く来院時には意識障害が出現していました。すぐに蘇生処置が行われ、心拍は回復しましたが自発呼吸がなく人工呼吸器が装着され入院となりました。
奥様以外のご家族は県外在住であり、治療方針などの意思決定の場面では電話での相談となっていました。
医師からの病状説明もありましたが、奥様はA氏の急速な病状の変化に混乱と病状の受け入れが難しい状況が入院後も続きました。
コロナウイルス感染症対応による面会の人数制限のある中県外のご家族も順番に面会し、奥さまは娘様と一緒に外出するなど気分転換をはかりながら過ごされました。
娘様が県外に帰られる前に看護師が清潔ケアを提案し、娘様と奥様が爪切りと手浴を行いました。
その後患者様の状態の悪化がみられ、残された時間が短いことをお伝えしました。
奥様は「看護師さんが後悔が残らないように一緒にケアをしませんか、と声をかけてくれて爪切りが家族でできました。なので、家族としても心構えができました。もし間に合わなくても後悔はありません。」と話されました。
短い時間でのお看取りが予想された患者様とご家族が触れ合う時間を提供できたことは、病状を受け入れる心の準備ができる時間であったと思います。
これからも患者様、ご家族へ寄り添う看護ケアを実践し、また病棟看護師間でもケアを伝承しながら、日々のケアにつないでいきたいと思います。