緩和ケア病棟へ異動して間もない頃、プライマリー看護師として担当させていただいた患者さんがいました。
患者様は当初、「年内を迎えることは難しいかもしれない」と言われていました。
しかしご本人の頑張りとご家族の支えもあり、新しい年を迎え、誕生日を迎えることができました。
さらに、ご家族との外出や散歩を楽しまれ、一番の楽しみだった息子様の始球式にも観戦することができました。
病気とともに歩む日々の中でも、大切な人とのかけがえのない思い出を積み重ねることができた時間だったと思います。
患者様はとても人との関わりを大切にされる方でした。
日常生活動作が自立していた頃は、病棟内を散歩したり、ラウンジで過ごしたり、時にはナースステーションまで来て私たちと何気ない会話を楽しんだり、一緒にYouTubeを観たりすることもありました。
私のことが「お気に入り」で、まるで孫のように接してくださったことを今でもよく覚えています。
病状が進み、思うように身体を動かせなくなってからは「寂しい」とナースコールを鳴らされたことがありました。
そんな時は、ベッドサイドで話しをしたり、ただそばで時間を過ごしたりしました。
それだけで患者さんの表情が穏やかになり、安心したように眠られる姿を何度も見ることができました。
緩和ケアでは、身体の苦痛を和らげるだけでなく、不安や孤独といった心の苦痛にも寄り添うことが大切です。患者様との関わりを通して、「そばにいる」という何気ない時間そのものが、その人にとって大きな安心につながることを教えていただきました。
また、ご家族は頻繁に面会に来られ、患者さんを囲んで穏やかな時間を過ごされていました。
患者様だけでなく、ご家族も含めて支えていくことが緩和ケアの大切な役割であり、その時間をともに過ごせたことは、私にとっても大きな学びとなりました。
この患者様との出会いは、私が緩和ケア看護を考える原点になっています。
限られた時間の長さではなく、その時間をその人らしく、そして大切な人とともに過ごせるよう支えること。それこそが緩和ケアの大切な役割なのだと、この患者様から教えていただきました。
この経験を胸に、これからも患者様一人ひとりに寄り添う看護を続けていきたいと思います。

