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「桜が見たい」 高松平和病院緩和ケア日記

緩和ケア病棟に入院中の患者様の娘様から、ある相談がありました。

「3月末に車椅子で栗林公園まで連れて行って桜を見せてあげたいんです。その頃ならそろそろ桜も咲き始めているかなって。病院から直接行こうと思っています」と言われました。

主治医に相談すると、外出の許可がおりました。

外出1週間前、外出が難しいと思われるほど状態が悪化したのですが、本人やご家族の外出したいという希望は変わりありませんでした。

当日の朝、外出できそうですかと看護師が本人に声をかけると頷かれました。
羽織りを着て、リクライニング車椅子に乗り、娘様と一緒に1時間ほど外出されました。

帰院後、桜見られましたかと尋ねると、本人は笑顔でピースサインをされました。
また、スタッフに桜の下で撮影した数枚の自身の写真を嬉しそうに見せてくれました。
桜の木の下で、濃いピンク色の傘をさした、本人の表情はいつも以上にとても穏やかな表情でした。

外出は大成功であったことが伝わってきました。

どんなに状態が変化しやすい状態であっても、本人がご家族の希望や意向をまずは聞いて尊重することが大事であると、今回改めて実感しました。