「寄り添う気持ちが相手の心を溶かす」 高松協同病院

Aさんは事故で多発骨折を受傷し、救急病院で手術後にリハビリ目的で転医してこられました。
これまでの生活史をお聞きしていると、幼少期から壮絶な人生を歩んでこられていることがわかりました。

私たち民医連の職員は、生命兆候「バイタルサイン(VS)」と同じように、生活背景・環境や人間関係、地域とのつながり、社会的な側面「ソーシャルバイタルサイン(SVS)」も重要だと捉えています。
AさんはSDH(健康の社会的決定要因)が不足していることがわかりました。

事故の後遺症にてサービス付き高齢者住宅に退院することが決まりましたが、入院前まで暮らしておられた賃貸住宅は草木が生い茂ったもの屋敷となっており、物の廃棄に多額の費用がかかることが判明しました。

頼れる人もいないAさんでしたが「家には来てほしくない」という思いがあり、訪問の同意を得られるまで時間をかけて想いに寄り添っていきました。

最初はお金がないので自分で片づけると言っておられたAさんでしたが、訪問時家の様子と自身が動ける範囲を見て落胆しておられました。

そんなAさんに「病院のスタッフも手伝えますよ」とお伝えし、計4回Aさんと自宅訪問して片付けの準備を行い、まる2日間かけて管理者や組合員さんも含むスタッフのべ21名で片付けと物の廃棄(コンテナ12杯分)、退院先の引っ越しを行いました。

Aさんに終了を報告すると、涙ながらに感謝されました。

今までご苦労されてこられた分、退院後はゆっくりとした新しい生活を送ってほしいというプライマリーのあきらめない想いがAさんの頑なな心を溶かし、それを支えるチームの力で成し遂げられた事例でした。