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循環器科 松元 一郎 |
脳血管疾患は昭和50年ごろまでは日本人の死亡原因の第1位でしたが、ここ30年で減少し、癌や心臓病についで第3位となっております。これには高血圧に対する治療等が進歩し、脳出血が減少したことが1つの理由として挙げます。
今も患者は多い
では、脳血管疾患は過去の病気といってよいのでしようか?
実はこの統計には大きな落とし穴があります。というのは、脳血管疾患や心臓病は急性期医療が進歩したため、直接死亡原因にならなくなっただけで、実際は病院で治療を受けている患者様はむしろ増加しているのです。さらに困ったことに一旦脳血管疾患に罹患すると、麻痺や痴呆が出現し、御本人だけでなく御家族にも多大な負担がかかることになります。従って脳血管疾患は本邦ナンバーワンの国民病であるといえるのです。
脳血管疾患は脳出血やくも膜下出血等の出血性のもの、脳梗塞等の虚血性のものに分類されます。近年は脳梗塞、なかでも動脈硬化を主体とするアテローム血栓性脳梗塞や心臓病に起因する心原性脳梗塞が増加しています。
原則は食事・運動療法
脳血管疾患の場合、MRIやCT、超音波検査の技術の進歩にもかかわらず、発症の予測は非常に困難です。したがって、この病気を発生させないためには、喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病等の危険因子をなくすことが発症させないための最も必要な治療と考えられます。ちなみに血圧を2?Hg下げるだけで、脳梗塞は1万人以上減るといわれています。治療の原則は食事・運動療法ですが、最近様々な研究では、早い段階で薬剤を開始する方がよいといわれています。
薬は医師と相談して
“薬を飲み始めたら一生飲まなければならないから、まだ薬は飲みたくない”といわれる方がおられますが、これは大きな間違いです。もちろん良くなればいつでも内服は中止できますし、放置しておくと病気は進行し取り返しのつかない状態になることも考えられます。薬物治療開始の必要性は、患者様ごとに異なりますので、一度循環器科担当医師にご相談下さい。
(高松平和病院)
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